「葉桜の 中の無数の 空さわぐ」 篠原梵(しのはら ぼん 1910〜1975)
桜の花が咲き終わり、すべて散った後、桜の木には新しい葉が伸びはじめ、今ごろの季節になると、みずみずしい若葉が密生します。「葉桜」といわれ、花とはまた違った美しさがあります。
梵の冒頭の句は、「青嵐(1.青々とした山の様子。2.青葉のころに吹くやや強い風。[季]夏。)が吹き荒れる日、葉桜を見上げると、ざわざわと揺れ動く葉の間から見える空が、いくつもの断片となってざわめいていた」という様子を詠ったものです。
桜は、花が終わると、青い若葉が風にそよぎ、日差しをキラキラ受けながら、葉桜に姿を変え、再び私たちにさわやかな初夏の香りを運んでくれます。
葉桜の緑の波の下を初夏の風とともに、歩くことができるこの季節は、1年中で1番爽やかな季節の1つです。
桜の花の咲く期間は、短く、盛りは、1週間ほどで終わってしまいます。花を愛でるお花見などの行事も、儚い桜の花が珍重されている証です。そんな桜の花の余韻に浸るために、「葉桜」があるのかもしれません。